金利が上がるときの個人向け国債 変動と固定をどう選ぶか
預金に置いてあるお金を、もう少し生かせないだろうか。
でも、株式のように値段が大きく動くものには、まだ不安がある。
そんなとき、個人向け国債は気になる選択肢のひとつです。
ところが調べてみると「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類があり、どれを選べばよいのか迷ってしまいます。
金利が上がりそうなら、変動型がよさそうに思えます。
その考え方には理由があります。
ただ、最終的に受け取るお金は、金利の上がり方や、どれだけの期間持ち続けるかによって変わってきます。
選ぶときに考えたいのは、金利の見通しと、そのお金を使う時期の二つです。
この二つを重ねながら、それぞれの特徴を整理してみましょう。
国にお金を貸して利子を受け取る
国債を買うとは、国にお金を貸すことです。
一定の期間お金を貸す見返りとして利子を受け取り、約束した期限である「満期」が来ると、元本が返ってきます。
元本とは、最初に出したお金のことです。
個人向け国債は、個人が購入しやすいように設計された国債です。
1万円から1万円単位で買うことができ、利子は半年に1回受け取ります。
「固定3年」は、購入時に決まった利率が3年間続きます。
「固定5年」は、その期間が5年間です。
どちらも満期まで持てば、受け取る利子の見通しを最初に立てられます。
「変動10年」は満期が10年後で、利率が半年ごとに見直されます。
世の中の金利の動きに応じて、受け取る利子も増えたり減ったりします。
たとえば、数年後に使う予定のお金について「その日までにいくら受け取れるかを決めておきたい」と考える人もいるでしょう。
一方で「この先金利が上がったら、受け取る利子も増えてほしい」と考える人もいます。
どちらの気持ちも自然なものです。
求める安心の中身によって、選ぶ理由は変わってくるのではないでしょうか。
変動10年の利率は半年ごとに変わる
変動10年の利率は、その時点の「基準金利」に0.66を掛けて決まります。
基準金利には、10年物の国債(固定金利)の入札結果をもとにした金利が使われます。
少し難しく感じるかもしれませんが、「長い期間の金利をもとに、自分が受け取る利子の割合を半年ごとに決め直す」と捉えておけば十分です。
たとえば基準金利が年2%なら、適用される利率は年1.32%です。
これは仕組みを説明するための仮の数字です。
実際の例では、2026年9月募集分の初回の基準金利は2.96%で、これに0.66を掛けた年1.95%が最初の利率になりました。
なお、この記事で示す利率はすべて税引前のもので、受け取る利子からは別に税金が差し引かれます。
この仕組みには、低い利率のまま長く持ち続けることを避けやすい、という良さがあります。
購入後に基準金利が上がれば、利率の見直しを通じて受け取る利子も増えるためです。
ただし、見直しは半年に1回です。
ニュースで金利が上がったと知っても、その日から受け取る利子が増えるわけではありません。
また、日本銀行が決める政策金利の数字が、そのまま利率になるわけでもありません。
もとになるのは、あくまで10年物国債の金利です。
反対に、基準金利が下がれば、適用される利率も下がる可能性があります。
年0.05%という最低利率の保証はありますが、購入時の利率がずっと続くわけではありません。
固定型の場合は、購入後に世の中の金利が下がっても、購入時に決まった利率が満期まで続きます。
固定型にも、同じく年0.05%の最低利率があります。
「今の条件なら納得できるので、数年分の利子を決めておきたい」という人にとっては、この確かさが大きな意味を持ちます。
金利が上がっても、利子の合計で差がつく
実際の数字を見てみましょう。2026年9月募集分では、変動10年の初回の利率が年1.95%、固定5年が年2.24%、固定3年が年1.96%でした。
購入時点では、固定5年がもっとも高い利率だったわけです。
変動10年を選べば、その後に利率が上がる可能性があります。
しかし、あとから固定5年の利率を少し上回っただけでは、それまでに開いた差まで埋まるとは限りません。
毎月の給料にたとえると、途中で昇給しても、数年間の収入の合計がすぐに逆転するとは限らないのと似ています。
いつ昇給したのか、どれくらい増えたのか、その後どれくらい続いたのかが関係してきます。
国債の利子も同じように、期間全体を通して考える必要があります。
金利が上がる方向かどうかだけでなく、どの程度の利率がどれだけの期間続くかが大切だということです。
一方で、変動型が有利になるために、比べる期間のあいだずっと金利が上がり続ける必要はありません。
早い段階で利率が上がり、その水準が長く続けば、途中から横ばいになっても、同じ期間で比べた固定型より利子の合計が多くなる場合があります。
途中で少し下がったとしても、それまでに受け取った利子が十分に多ければ、結果は変わらないかもしれません。
大事なのは、「金利が一度でも上がったか」「最後まで上がり続けたか」という一点だけで判断しないことです。
保有期間全体の利子と、次に見る換金の条件をあわせて考えていきましょう。
途中で換金できることと、そのときの差し引き
「変動10年」と聞くと、10年間はお金を取り出せないように感じるかもしれません。
実際には、個人向け国債は発行から1年が過ぎれば、原則として一部でも全部でも途中で換金できます。
これは固定5年と固定3年にも共通する仕組みです。
ただし、最初の1年間は原則として換金できません。
1年が過ぎた後も、申し込んだその日に受け取れるわけではなく、受け取りは申込日を含めて4営業日目以降になります。
そのため、急な医療費や生活費のように、いつ必要になるか分からないお金をすべて移してしまうと、使い勝手の面で困ることがあります。
すぐに引き出せる預金を確保しておく意味は、ここにあります。
また、途中で換金するときには「中途換金調整額」が差し引かれます。
原則として、直前2回分の税引前の利子に相当する金額に、0.79685を掛けた額です。
一般的な課税の場合、「直前1年分の税引後の利子に相当する額が差し引かれる」と考えると分かりやすいでしょう。
0.79685という数字は、利子に通常かかる20.315%の税金を差し引いた後に残る割合です。
たとえば、直前2回分の税引前の利子が合計2万円なら、差し引かれる額は1万5,937円です。
これは調整額そのものの計算で、実際の換金額には、前回の利払い日から換金までの利子に相当する額(経過利子)なども加わります。
つまり中途換金の調整は、すでに受け取った利子のうち、直前1年分に相当する額を戻すような仕組みです。
そのため、換金時に振り込まれる金額だけを見ると、購入した金額を下回る場合があります。
それでも、それまでに受け取った利子も合わせた受取総額で見れば、元本は確保される仕組みです。
「元本割れしない」という説明は、このようにお金の出入り全体で捉えると理解しやすくなります。
ただし、これは元本と利子の支払いを国が約束していることを前提とした話で、預金保険の対象ではない点も覚えておきたいところです。
固定5年や固定3年を満期前に換金する場合にも、同じ調整があります。
利率の高い商品へ何度も乗り換えるなら、そのたびに差し引かれる額も考えておかなければなりません。
ここで説明しているのは、あくまで「個人向け国債」の換金の仕組みです。
一般の国債を市場で売る場合は、その時点の価格で売ることになるため、売却による損や益が生じます。
同じ「国債」でも、途中でお金に戻す方法は確かめておきたいところです。
お金を使う時期をそろえて比べる
固定5年と変動10年は、満期までの長さが違います。
そのため、それぞれの満期までにもらえる利子をそのまま比べても、公平な比較にはなりません。
たとえば、5年後に自宅の修繕費として使いたいお金があるとします。
固定5年なら、ちょうどその時期に満期を迎えます。
変動10年の場合は、5年後に使うには途中で換金する必要があります。
比べるなら、同じ5年間に受け取る利子から、換金のときに差し引かれる額を引いて見ることになります。
逆に、10年間使わないお金なら、固定5年は満期を迎えたあと、残りの5年間をどう運用するかも考える必要があります。
そのとき同じ利率で買い直せるかどうかは、今の時点では分かりません。
このように比べる期間をそろえると、「固定は今の利率が高い」「変動はこれから上がりそう」という印象だけでは決められないことが見えてきます。
3年後に使うことがはっきりしているなら、固定3年のように、その時期に満期を迎える商品を検討する理由があります。
使う時期がまだ先で、金利が上がったときには利子も増えてほしいなら、変動10年を検討する理由があります。
ただ、1年以上使わないというだけで、変動10年が必ず合うとは限りません。
たとえば利率が変わらないまま2年ほどで換金すると、受け取った税引後の利子のおよそ半分を戻す計算になります。
同じ期間の定期預金の条件とも比べてみたいところです。
実際に申し込む前には、その月に募集されている3種類の利率と、発行日、満期日を確認しておきましょう。
個人向け国債は毎月募集されていますが、発行日は原則として募集月の翌月です。
たとえば2026年9月募集分の発行日は、10月15日でした。
最初の1年間という換金できない期間も、申し込んだ日ではなく、この発行日から数えます。
金融機関によっては口座の管理に手数料がかかる場合もあるため、その有無もあわせて確認しておくと安心です。
金額が増えることと、買える量が保たれること
個人向け国債を考えるときには、物価との関係も知っておきたいところです。
物価が上がると、同じ金額で買えるものが少なくなります。
これが「インフレによってお金の価値が下がる」ということの意味です。
たとえば、税引後の利子によって100万円が1年後に102万円になったとします。
その一方で、100万円で買うつもりだったものが103万円に値上がりしていたら、必要なお金には届きません。
仮の例ではありますが、手元の金額が増えることと、暮らしに必要なものを買う力が保たれることは、同じではないのです。
変動10年の利率は金利に応じて動きますが、物価の上昇率に合わせて利子や元本が増える商品ではありません。
利率が上がったとしても、必ず物価の上昇を上回るとは限りません。
それでも個人向け国債には、元本の返済を国が約束しているという特徴があります。
物価への備えとしては限界があっても、価格の大きな変動を避けたいお金の置き場所として、検討する理由は十分にあると考えられます。
近いうちに使うお金には、必要な金額を確保しやすいことを求める。
もっと先のお金には、物価の変化も含めて考える。
同じ人のお金でも、使う目的によって求める役割は変わってきます。
種類や購入時期を分けるという選択
ここまで読んで、「結局、金利の先行きを予想できなければ選べないのでは」と感じた方もいるかもしれません。
そんなときは、全部を一つのタイプに決める必要があるのか、と考えてみてはいかがでしょうか。
たとえば、数年後の使い道が決まっている分は固定型を、使う時期に余裕がある分は変動型を検討する。
急な支出に備える分は、引き出しやすい預金に残しておく。
金額を一律に何割ずつと決めるのではなく、それぞれのお金の使い道に合わせて分ける考え方です。
購入する時期を何回かに分ける方法もあります。
とくに固定型では、一度に全額を買うと、その時点の金利条件で全額が決まってしまいます。
時期をずらせば、異なる条件で買うことになります。
ただし、あとから金利が下がれば、その分の条件は悪くなります。
また、購入を分けると、それぞれの発行日から1年間は原則として換金できない点にも気をつけたいところです。
分けることは、特定の時期や一つの金利予想に判断を集中させすぎないための工夫であって、必ず受取額を増やす方法ではありません。
また、固定と変動を組み合わせても、どちらも日本国にお金を貸す円建ての資産であることは変わりません。
個人向け国債を選ぶとき、最初から一番得になる商品を言い当てようとすると、なかなか決められなくなります。
まずは手元のお金について、「いつ使うのか」「途中で必要になる可能性はあるか」「利子を確定させたいか、金利に応じて変わってもよいか」を書き出してみてはいかがでしょうか。
自分のお金の使い道が見えてくると、預金、固定型、変動型のそれぞれに任せたい役割も、自然と見えてくるはずです。
実際に購入する際は、最新の募集条件を財務省のホームページや取扱金融機関で確認したうえで判断するようにしてください。






